Dr.いまいの足あと


平成16年〜17年

  平成17年12月11日 記  私が、ORCAの導入に至った経緯
 

                      宝塚市 医療法人社団 薫風会
                          いまい内科クリニック 今井 信行

 当院では、平成17年10月から、ORCA単独で医療事務を運用始めました。その経緯を記載してみたいと思います。

 当院の開院は平成12年ですが、今年で開院して丸5年が経ち、開院時に導入したレセコンも平成17年9月末でリースの期限が切れることになりました。リース契約を更新するか、違うレセコンに乗り換えるかを決める必要に迫られました。いっそのこと電子カルテとも思いましたが、私はブラインドタッチも出来ませんし、医療秘書でも雇用しない限り、日常の診療で電子カルテを使用するのは、なお尚早かと感じておりました。また電子カルテはかなり高額ですし、メーカー独自の規格で構成されており、融通がきかない(メーカーに制約される)というような印象も受けておりました。そのような理由でレセコンのリース切れに頭を悩ませていました。

 話が横道にそれますが、開院してしばらくした頃、開業の先輩から、TFCというメーリングリストの存在を知りました。広島市の田坂佳千(たさかよしかず;TFC@menet.gr.jp)先生が運用されている会員数2000名を越えるメーリングリストです。非常に広範に医療全般に関する話題を扱ったMLで、その良質な情報は、孤独になりがちな開業医にとって、生涯学習のツールとしても有用な情報を与えてくれます。私も早速に、メーリングリストに参加させてもらいました。そのメーリングリストの中で、「RS-Base」と呼ばれるファイリングソフトがあることを知りました。RS-Baseも同じく広島で開業される山下郡司先生が開発されたフリーソフトです。ちょうど開業して2年ほども経ち、次第にカルテが分厚くなるにつれ、さまざまな患者データをどのように管理するかに、またも頭を悩ましていた時期でした。RS-Baseを知り、これなら血液検査、胸部レントゲン、腹部エコー、紹介状などの当院で保管する患者データをすべて管理できそうだと思い、さっそくに導入することにしました。
 RS-baseは予想以上にすばらしいソフトで、血液検査、胸部レントゲン、腹部や心臓のエコー検査、紹介状、他医よりの胃カメラなどの検査所見など、およそあらゆる情報をファイリングすることができます。さらにこれらを利用して、血液検査の結果から任意のデータをグラフ表示することも出来ますし、血液検査やデジタルで入力した胸部レントゲン、腹部エコーなどを書き込んだ紹介状を作ることもできます。今では、日常の診療に欠かすことのできない、診療補助ツールになりました。

 毎日の診療で使いこなすには、入力が簡単なこと、バージョンアップが簡単なこと、万が一に備えファイルのバックアップが簡単に可能なこと、などが必要な条件だと思います。いくら便利なソフトであっても、入力や管理に手間がかかるソフトでは長続きしません。そういう意味でもRS-Baseは本当に良くできたソフトです。このようなソフトが現役の医師によって開発されたこと、またほとんど無償で提供されていることなどは、驚きとともに感謝そのものです。
RS-Baseの詳細については、以下のアドレスを参考にして下さい。
http://www.rsbase.jp/RSB/

 当時、このような環境を整えていた当院にとっては、レセコンの入れ替えにあたり、なんとかこのRS-Baseとの連携がとれるものを入力したいと考えていました。せっかく蓄えてきたこの財産を少しでも有効に使いたいと思っていました。RS-Baseのメーリングリストを参考にしていますと、日医標準のレセプトソフトであるORCAは、このRS-Baseとの連携が可能であることを知り、RS-Baseとの接続をメンテしてくれることを前提に、ORCAのサポートベンダーを探しました。数社と交渉の後、私は大阪のベンダーと契約することにしました。
 ベンダーからは、ORCAに移行するには最低3ヶ月間の準備期間があった方がいいと、助言されていました。そこで、Xデーを平成17年9月末に据えて、5ヶ月の準備期間を置くことにして、平成17年4月にベンダーと契約しました。ORCAの納品は、4月26日でした。

 ORCAへの移行時期で、約1600件の患者情報でした。現在、ほとんどの既存の大手レセコンから、ORCAへのカルテ情報の移行も可能ですが、http://www.orca.med.or.jp/receipt/tec/convert/convert.rhtml
当院ではアクテイブな患者数はさらに少ないために、最初の2ヶ月は患者情報の入力をすることで、事務員にORCAの操作に慣れてもらいました。納品と初期操作の時期に、ベンダーの方が当院まで出張してくれました。その後は、ほとんどが電話での対応で終わりました。しかし、困ったときにはいつでも電話で相談できる、必要なときにはVPNを使ったリモートアクセスで当院のORCAの画面を見ながら指導を受けられるという安心感は有難かったです。
 また今までのレセコンならば保守契約を結び、保険改正の度にプログラムのCDやフロッピーが配布され、インストールが必要でした。しかしORCAでは、日医総研のサイトから、プログラムをダウンロードすることで対応します。 重要なプログラムの更新の際には、ベンダーから指示をもらえますので、指示のある更新のみを行えば済みます。このようなORCAの保守契約は、年間のサポート料金に含まれており、更新のたびに保守料を請求されることはありません。

 3ヶ月目、4ヶ月目は、既存のレセコンとの並行入力を行いましたが、この時点が最も大変だったと思います。事務も悲鳴を上げながらも頑張ってくれました。レセコンの移行時期には、どうしてもこのような平行入力を行い、正しく入力されているか、検証していかなければならないと思います。比較的患者数が少ない時期を選んで、計画的に移行されることをお勧めします。3ヶ月目に、既存のレセコンと、ORCAにより作成したレセプトに差が無いことを確認し、4ヶ月目にはORCAに比重を移しました。そして5ヶ月目にはORCA単独でレセプトを作成するようになりました。いまから振り返っても、並行入力の時期が最も大変でしたが、比較的スムーズに移行できました。院内で使用する薬剤名に、旧レセコンで使い慣れたコードを振りつけたり、比較的自由に環境を整えることができる点は便利でした。

 平成17年9月分のレセプトは、ORCA単独で提出することができましたので、そのまま一挙に10月には旧レセコンにお引取り願い、ORCA単独で作業することにしました。現在もそのまま特に問題なく、今では、事務員もORCAに慣れて、特に問題なく作動しています。
 ORCAを導入することで総体のコストダウンが図れ、入力端末が2台に増えて入力のスピードアップが可能になりました。またカラーレーザープリンタによる薬剤情報の出力が可能になり、患者様からも好評を得ております。

 懸案であった、RS-Baseとの連携は、島根の小竹原良雄先生により公開されている連携プログラムを利用しています。
http://www2.orca-support-center.jp/~yamashita/orca/orca.rsb.zip
設定の実際は、ベンダーのSEの方が設定してくれましたが、これを利用すると、ORCAで入力した患者情報、ORCAに入力した処方などが、検査情報などを蓄積したRS-Base上で表示することができるので、なにかと便利かつ快適です。

 その他にも、ORCAはオープンソースですので、いろいろなORCAツールが開発されて公開されています。鳥取の中山裕雄先生が公開して下さっているのは、ORCAツールと呼ばれるものです。
http://www5f.biglobe.ne.jp/~nakayamahiroo/
JAVAでプログラムされている、このツールを使うと、Linuxで動くORCAのデータを、使い慣れたWindowsのアプリケーションである、Accessや、Filemakerなどの汎用データベースに移すことができます。一瞬のうちに見慣れた画面に患者情報を取り出すことができて、鮮やかなものだと感動しました。

 またORCAには標準で、患者の保険情報に漏れがないかなどを検証してくれるプログラムが付いていますが、長崎の本田孝也先生が作成されたレセプトチェックプログラムも秀逸です。ファテイマ(http://www.phatima.co.jp/)と本田先生の共同開発だそうですが、このプログラムを使うと、処方薬剤と病名の整合性を検証してくれます。

 この11月分のレセプトは、11月中にまずORCA側で患者の保険情報に漏れがないかを検証し、その後このレセプトチェックプログラムをかけて、処方薬剤に対応する病名に漏れがないかをチェックしました。その結果、12月に入って出力した本番のレセプトでは、病名漏れが少なく、レセプトのチェックがとてもスムーズに終了しました。これらのツールを使うことで、電子請求も不可能ではないなと感じております。来年の目標をレセプトの電子請求に据えたいと思っています。

 この小文では、当院でのORCAの導入と、ORCA周辺の便利なプログラムを御紹介させて頂きました。まだORCAを使い始めたばかりですが、このようにレセコンから、入力した情報を容易に抽出して再利用するというようなことは、今までのレセコンでは考えられなかったことです。さらに今後、益々とORCAの周辺ツールが開発されることが期待されます。最近、臨床検査大手のSRL社の電子カルテである、DDLightが日医総研に提供されたそうです。WOLFと称するそうですが、日医総研からORCAと連動する入力支援ツールが備わるわけで、まだ詳細は確認していませんが、将来性があると思います。
その他にも、ORCAと接続可能な電子カルテが続々と登場しています。
 私は、パソコンが好きですが、プログラムするほどの能力はありません。私にできることは、先達の先生方が開発されたツールを利用させて頂くことです。でもそれでいいのではないでしょうか。
任せるべきところは、しっかりとしたベンダーに任せて、私達医師は、本来の職務に注力すべきではないでしょうか。

 政府は、今後の医療改革の柱として、2011年にはレセプトの電子請求をすべての医療機関に義務付けるような方針を打ち出していますが、日医が推進するORCAプロジェクトがそのような政府の方針を主導するようなプロジェクトに育って欲しいと感じています。

   
 
平成17年12月、兵庫県医師会報への投稿原稿
  私が、ORCA(Online Receipt Computer Advantage)の導入に至った経緯
   
 
平成17年10月5日、宝塚市健康づくり講座にて
  「腎臓の働きと病気」について講演致しました。
   
 
  上記に、「腎症におけるACEI、ARBの使い分け」というタイトルで、原稿を書きました。
オンライン教科書のUptodateを参考に、2004年日本高血圧学会のガイドライン、JSH2004を踏まえて、腎機能障害を有する際の高血圧の管理についてまとめました。
   
 
平成17年4月14日 宝塚市にて
  宝塚市の開業医の仲間とともに「臓器障害をもつ高血圧の治療」について、対談しました。
司会、斉藤公明先生、出席、蒲学先生、福本康夫先生、藤本俊典先生とともに。
宝塚ホテルにて。
   
 
平成17年3月17日   宝塚高度福祉研究会にて
  関西学院大学 定藤繁樹先生 主催の宝塚高度福祉研究会にて、「これからの医療と福祉の連携」について講演しました。
   
 
平成17年1月13日 千里阪急ホテルにて
  大阪大学病院長 荻原俊男先生と、「高齢者高血圧の診断と治療」について対談させて頂きました。
   
 
   
 
平成16年9月18日
  神戸のがん患者会、「ゆずりは」にて、在宅医療について講演しました。
   
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