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関西労災病院 院内誌「かがやき」によせて
今井信行

 平成12年4月から始まる第5番目の社会保障である介護保険を、ある人は大宝律令以来の社会制度の変革とも呼ぶ。それほど大げさでないにしても、この介護保険の浸透が、いずれ同じ社会保障制度である医療保険にどのような影響を及ぼすか想像してみた。
 すでにご承知のように、介護保険を利用するに当たっては要介護者はまず認定を受け要介護度が決定される。要介護者のことを介護保険では利用者と呼ぶ。医療保険では要介護者はすなわち患者であろう。つまりいずれ患者にも利用者という意識が高まり、より医療機関を選別するだろう。病院は利用するところなのである。さらに介護保険では要介護度に応じた支給限度額の中で介護計画が作成される。医療保険で俗にいう「マルメ」が先に実行される。いずれ医療保険でも患者という利用者の意向を聞きながら、個別の診療単価、薬価などを参考に、マルメの枠内で診療計画を作るようになるかも知れない。「あなたは胃ガンで胃の全摘術が必要だが、医療計画上は総額××点で治療を終えなければならない。糖尿病もあるので合併症がおこるかも知れないので、抗生剤は安いものにしたいが、いかがでしょう?」といった具合であろうか?
 また介護保険では介護計画に不服を申したてる機関が設定されるが、医療保険でもこのような機関が設置され、医療をめぐる苦情相談が一般化するかも知れない。介護保険では介護報酬は各地域の特殊性を反映して、複数の報酬単価が設定されている。医療保険でも医師の経験熟達度、病院のランクわけに応じて複数の診療単価が設置されるかも知れない。この介護計画の作成、請求にコンピューターの利用が促されているが、さらに介護報酬の改訂などの情報はインターネットで配信されることになっている。この点でも明らかに医療保険より先んじている。
 現在医療情報の開示や包括化、クリテイカルパスなど、医療ビッグバンと呼ぶ構造改革が進行中であるが、介護保険の創設はその歩みを一挙に加速することだろう。時代は変わる。大変ではあるが、楽しみでもある。
 介護保険前夜に、たとえば10年後の自分はどんな社会で医者を演じているのか、はたまた患者を演じているのか、思いを巡らせてみた。

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