できごと徒然
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No.0045

できごと徒然(45) −北京春遊−

 

 2004年の3月21日からわずかに3日間であったが、家族で北京に旅行した。 最近、中国が元気だと聞く。その中国の実際を垣間見る目的で出かけた。 朝、5時に起きて、阪急西宮北口まで電車で出かける。そこから関西空港まで空港バスがある。我が家から空港までこれが一番楽そうだ。 半年振りの関西国際空港(KIX)。あいかわらずかなり殺風景だ。もう少し、日本の玄関口といった自負が欲しいと言うもんだ。子供たちも、半年振りということで、出国審査でのパスポートの提示も随分慣れたようだ。

 いつ来ても、国際空港には華やぎがある。免税店で時間をつぶしながら、ANAに乗って北京に向う。3時間あまりのフライトだ。 降り立った北京は、曇り。気温もそんなに寒くない。黄砂というわけではないが、なんとなく曇っている。北京は、あるいは大陸のゆえか、空気が乾燥している。たった3日間の滞在が終わった今でも、肌が乾いてぴりぴりしている。

 曇った北京空港で、JTBの迎えを受ける。現地の中国人スタッフだ。HYATTとか有名ホテルが空港にオフィスを構えているが、従業員の態度はおしなべて悪い。勤務中にトランプをしていたり、タバコをすったり、新聞を見たりしている。このような現地スタッフまでは教育が回らないのだろう。こういう従業員の姿勢を見ていると、はたして中国が日本を追い抜くほど生産性を高めることが出来るのかどうか疑問にも思える。 さておき、ようやく現れた現地のJTBスタッフの出迎えを受けて、マイクロバスでホテルに向う。

 途中、車窓から見ていて驚くのは、行き交う車の新しいことだ。しかもAudiとか、Volkswagenなどの高級車が多い。聞くところによると、ヨーロッパの大手自動車メーカーとの合弁で、これらの車は中国現地で作られている国産車であるとのことだ。さすがに欧米各国ともに中国の安価な労働力と、圧倒的な人口を持つゆえに市場としての魅力を充分に感じているようだ。日本もそうだが、生産拠点を中国に移そうとしているのだ。先にも述べたように、これだけの人口に均等な教育を与えることは不可能だろう。したがってこの中国が高学歴社会になり日本と同様の生産性を持つようになるとは思い難い。しかしながら圧倒的な労働力の安さから世界の工場として成長することは間違いないだろう。
中国は今、英才教育にも力を入れていると聞く。国民全体の教育レベルを揚げることで生産性を高めることはできなくても、一握りのスーパーエリートが、これらの労働力をリードすることで生産性を高めることはできるだろう。
このような社会の階層化、層別化というのは、過去にも絶大な皇帝の権力を許したわけだが、大国なるがゆえに中国の宿命的な構図と言えるかもしれないなどと勝手に考えたがいかがなことか。

 マイクロバスで到着したのは王府飯店という、北京最大の繁華街である王府井(ワンフーチン)にたつ高級ホテルだ。ペニンシュラ系の新しいホテルで、その内装の豪華さ、シックさには感心する。ホテル内のブテイックは、シャネル、ヴィトン、など高級ブランドばかりで、さすがに中国とは思えず違和感を覚えるが、それにしても上品な内装は素晴らしい。

 さて中国の通貨は「元」である。1元は約14円だが、感覚的には物価は日本の約10分の一くらいかもしれない。

 初日はホテルに荷物を置いた後、王府井通りを散策して紫禁城にむかう。明日のツアーに備えて予備行動であるが、途中で歩きつかれて、タクシーに乗り、一度市内の北京飯店にもどりお茶することにする。ここも大きなホテルだ。 それから、紫禁城の全容を眼にする目的で、紫禁城の北に造られた、景山公園に向う。紫禁城の周囲にめぐらされた堀を掘った土を運んでつくりあげた人口の築山だそうだ。
この景山公園に足を踏み入れると、驚いたことにあちこちから歌声が上がっている。とくに皆マイクを持っているわけではないが、何人かの集まりが出来ると、自然発生的にコーラスが湧き上がるようだ。青空歌声喫茶というわけだ。考えてみれば、金もかからずに、これほど気持ちのいいものはないかもしれない。みな大声で朗々と臆することなく発声している。その歌声は、ときに大きく共鳴して地響きのように感じられた。 マイクも持たずに、
朗々と青空の下で、、。
歌うというといつのまにか、カラオケのマイクを持つときしか歌わなくなっている自分に気づく。歌うって言うことは、本来それだけで、とっても気持ちのいいものかもしれないとしみじみ思う。


紫禁城遠景

 北京3月の夕暮れ。どことなくかぐわしい空気で、景山公園も華やいでいる。静かな池があり、周囲には柳の枝がしなっている。日本の公園には池があると、ながれというかせせらぎがあるところが多いと思うが、中国には流れを感じさせるようなものはない。ただ静かに池には水が満ちていて、どことなく曇った天気とあわさって、霞んだ雰囲気である。いわば墨絵の世界である。これが中国人の美意識か。(北海公園)

 景山公園の高台に上がると、一気に視界が開ける。紫禁城の全容が眺められる。周囲からも驚嘆の声が揚がる。甍の数、9999。72万平方Kmの方丈の敷地が広がる。
見渡す限りのなんという大きさだろう。方丈の上辺は折からの曇り空に重なって隠れてしまっている。(紫禁城遠景) 紫禁城、英語訳は、The forbidden city。
紫は天を表す色。中国の皇帝は天の子どもゆえ、天子と称す。天子の住まいだから、天の色は使えない。それゆえ紫禁城という。紫の次の色は黄色と赤。だから紫禁城に使われる色は黄色と赤が多い。(紫禁城1.2.紫禁城の壁)。
中国では数字の9が最も大切。だから造られた建物の総数は9999とのこと。徹底した中国人のこだわりが感じられる。


紫禁城

紫禁城

紫禁城の壁


龍の階段

 想像上の動物“龍”が、力の象徴として、崇められる。紫禁城の中は徹底して、龍である。壁から天井から柱から飾りから、無数の龍に囲まれている。なかでも長さ10メートルに及ぶかという大きな白大理石の一枚岩が紫禁城中枢への階段に利用されているが、その白大理石の一枚岩にも龍が彫られている。北京市内には山がなく、どこからどうやってこれだけ大きな岩を運んできたのだろう。50Km離れた山から、北京の冬の凍結を利用して、この大岩を運んできたという。(龍の階段) このこだわり、、、。驚嘆する。

 北京のはじめての夜は、こうして驚きとともに暮れて行った。ホテル近くの王府井には、 夜ともなれば、屋台が繰り出して大賑わいである。大きな肉の串焼きなどが売っている。 なかにはさそりの串焼きなども売っている。結局、からかいながら、ホテルへ戻り、シックなホテルの中の、中国料理店で夕食にする。片言の英語では、味付けの細かい表現までは依頼できず、まずまず標準の注文で無難に終える。(ハリポッタ。北京屋台。屋台の食べ物。)本屋の店先に、あのハリーポッタの中国語訳が置いてあり、おもわず写真を撮った。


北京の屋台

屋台の食べ物

ハリーポッタ


北京の歯医者
 2日目の朝食は、ホテル内のJINGという素敵なレストランで食べる。お粥や、飲茶にはじまる中華風、パンやオムレツの欧米風、それにふんだんのフルーツが加わり、リッチな朝食である。 満足、満足。

食事が終わったら、今日一日のJTBツアーに出かける。紫禁城、故宮博物館めぐりと万里の長城をめぐるツアーである。北京の街の通勤風景は、自転車が多い。結構車の通りも多いが、横断歩道も何もないところを皆自由に横断する。なんか危ない。(北京の朝の通勤。北京の歯医者。)ある大通りに面したデパートの前で、楽しい光景を見かけた。一日の仕事の始業前に皆外に出て、ラジオ体操ならず、なわとびをしている。なんか楽しそうでほほえましい光景だ。(仕事前の体操)。


北京の通勤風景

仕事前の体操



天安門広場
 紫禁城に入るまえに天安門広場に向かう。とにかく広大な広場である。囲むように人民公会堂など、ときおりテレビで見かける建物が並んでいる。紫禁城へは、天安門広場の前を横切る大きな通りを越えるべく、地下道を抜けていく。

 天安門をくぐり、紫禁城の中に入る。門とはいっても大建築物である。ここを破るのは至難のわざであろう。鉄の扉そのものも、厚さ30cmはあろうか?恐ろしく分厚い扉である。紫禁城の中は、先にも述べたように、皇帝を称え、護る、徹底的な過剰デコレーションの世界である。ここまでやるかといったため息の世界である。 昔の中国の人は、心底本当に皇帝は天の子供と思っていたのかもしれない。同じ人間と考えていたら、ここまでのものは造れまい。 皇帝には、数多くの後宮がいたそうであるが、そこは人間。富と権力をめぐる生々しい話にも枚挙に暇が無い。ため息とともに、故宮を後にする。

 次は、万里の長城を目指して、高速道路を走る。 途中、おおきなショッピングセンター併設のレストランで昼ごはんである。

 万里の長城まで、北京市内から1時間足らずである。 バスの中からも、山並みに連なる長城を眺めることが出来るが、八達領という眺めのよいところまで行く。
ここから実際に長城に登ることが出来る、向かって右が女坂、左が傾きのきつい男坂だそうだ。男坂のほうへ歩く。一歩登るたびに視界が開ける。はるか長城を見渡すと、山を越え尾根を超え、長城は文字通り延々と続く。

 この八達領の長城は明の時代の築城らしいが、ところによっては築城2000年、総延長6000kmという、スケールの大きさだ。はるかに連なる、長城を眺めて、人間とはこんなことができるのか、そのスケールの壮大さに、人間の計り知れない可能性を感じ、なんかしみじみ感動がこみ上げてくる。
はば5メートル、高さ10メートルほどの、草原をわたる長城の上に立つと、肌に風が心地よい。この風は2000年前も吹いていたのかとか、想いが膨らむ。

 あの項羽も、劉邦も、この長城の上でこの風に吹かれたかも知れないなどと、想像力ははるか中国の悠久の歴史に想いが馳せる。 日本では、このような感覚は沸いてこないかもしれない。やはり、2000年前から、そのままのかたちで残る万里の長城と言う遺産の上に立つからこそ、湧き上がる感情かもしれない。
山々を越えて、はるかにうねる長城にしばし見入る。尾根を越える風が頬に心地よい。見入っていると、次第に胆が据わってくる気がする。人間の壮大さ、可能性などが感じられて心が大きくなる。一方で、この荒唐無稽な構造物を見て、人間のばかばかしさ、愚かさも感じられる。 小さなことでくよくよしている自分が、いかにもちっぽけな人間に思えてくる。 子供たちも、感動しているようだ。

 名残惜しいが、夕陽の訪れた長城を後にして、市内に戻る。途中、シルクの工場に立ち寄る。カイコの発育からまゆができるまで、そのまゆをほぐして一本の糸を取り出すすべ。
この髪の毛よりも細い糸を10本より合わせて、絹糸にする。そして織物を織り上げる。 絹織物も、中国5000年の大発明といえる。中国の重要な交易品として、シルクロードを通じ、ヨーロッパの人々を魅了した、あのシルクの誕生である。

 カイコの吐き出す一本の糸がからんだまゆから、逆に一本の糸をつむぐ根気よさ。山あり谷ありの中国の大地を、2000年もかけて延々5000kmも石積みをおこない長城を築く根気よさ。なにか共通点を感じた次第である。

 夕食は北京市内に戻り、有名な北京ダックを頂く。パリッとした皮と、皮下のあぶらがジューシーである。薄い生地に包んで口に運ぶ。嫁のビールもすすむようである。

 明日はもう、帰らなければならない。つかの間の旅行だったけど、束の間だから、よけい楽しいのかもしれない。頭のなか、リフレッシュできて、いい旅行だった。
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