できごと徒然
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No.0055

できごと徒然(55) − WONCA レポート −

 

平成17年5月28日29日と、京都でWONCA(世界一般医家庭医学会)に参加しました。
私は英語の国際会議などほとんど出たことないので、興味半分でふらりと行ってきました。

WONCAというそうですが、
http://www.wonca2005.jp/kyoto/frame/f_wonca.html
上記の、ウエブサイトでも紹介されていますが、

医学の進歩とともに、専門分化が繰り返されるのも必然ではありますが、一方で、患者を人として包括的に診療する「家庭医」の必要性と生涯教育を組織しようという団体です。
オーストラリアの家庭医たちにより、1955年に始まったようですが、現在では世界80カ国、20万人の家庭医からなる組織だそうです。

3年に1回の世界大会の合間に、アジア太平洋地域会議が毎年行われているそうで、2005年、日本では初めてのこのWONCA地域会議が京都国際会館で行われました。秋篠宮両陛下が来られていました。

私も開業して、5年目となりました。
あらたまって振り返ってみると、夢中で過ごした時期も過ぎ、開業してみて、はじめて分かったいろいろな問題の解決の糸口にならないかと刺激を求めて参加してきました。

さてその家庭医ですが、英語で言うと、General practitionerとか、Family physicianと呼称されるものですが、最近の国際的な動向としては、一般医とか全科医などの呼称を使っていた香港やシンガポールなど英国の影響を強く受けていた国々でも、家庭医の名称に切り替えられつつあるそうで、家庭医という呼称が浸透しつつあるようです。

なぜ今あらためて家庭医なのかといわれると、日本ではどちらかというと大学や病院に勤める専門医の方が、優れているという認識がありますが、たとえば米国でも同様に専門医志向が顕著のようで、そのなかであらためて家庭医の役割を再認識しようという志向のように思われます。
家庭医がうまく機能することで、専門医がプライマリケアにかかわるよりも、医療費総額が少なく抑えられるといったことも指摘されていました。

その家庭医のかかわる広範な問題が、あちこちで交わされていましたが、家庭医という言葉が、英国でも米国でもサウジアラビアでも韓国でもノルウエイでも、同じような定義で通用するのが、なんか不思議な感じでした。いろいろと社会システムが異なるとはいえ、どこの国でも医師のありようは同じということでしょうか。

いろいろ断片的にしか聞き取れない部分もありましたが、日本以外の諸外国では、やはり医療は貴重な国民の限りある財産という認識で、たとえば、ノルウエイとか英国、キューバではおよそ人口1200から1500人くらいに一人の家庭医が配置されて、ゲートキーパーの役割を演じているようです。
国民はこれらGPの診断なくして、病院にかかることはできません。
ノルウエイの医師は、5000人に3人が配置されていて、いろいろな疾患のゲートキーパー役で大変と言っていましたが、一方で毎日の診療は9時から15時まで、あとは文献を読む時間とか、年間6週間の休暇を取らされるとか、その間は、残りの二人のGPに患者を預けるとか、GPの免許は更新制になっていて、3年間で500点取らないと更新できないとか、今回のWONCAの出席は15ポイントとか言ってました。

受けた教育も、社会制度もまったく違うのに、GPという接点でいろいろと会話が通じるのは、むしろ不思議なくらいでした。
いい経験ができました。

2日目は、電子カルテのセッションに行きました。
家庭医療学会ですから、主人公は開業医ですが、皆ITをたくみに使いこなしていたことが印象に残っています。

医療倫理で有名な白浜先生、学生の診療所での研修を進められているPCFMネットの内山先生、琉球大学の武田先生、TFCの田坂先生、RS-Baseの山下先生なども来られていました。
早速、PCFMネットにも参加することにしました。

電子カルテのセッションでは、この春から兵庫医大の第一生理学教授になられた越久先生が講演されていましたが、この先生は、同時に淡路島で開業されているようで、
自作の電子カルテを披露されていました。こんな人がいるんですね。
やはりweb型データベースでRS-Baseとよく似た印象でした。

二人目の演者は、TFCの田坂さんでしたが、ダイナミクスとRS-Baseの講演をされました。山下先生も来られていましたが、RS-Baseはやはりよくできたソフトであること
を皆で確認しました。

三人目は、京都大学の吉原先生でしたが、ドルフィンプロジェクトを宮崎、熊本、京都で展開を開始されています。
要は患者データを地域のサーバーに蓄積して、相互利用しようというプロジェクトです。すでにそのための言語、XMLの医療版MMLも開発されているそうです。
ちなみにORCAはこのMMLによるデータ通信を可能にする、CLAIM規格を標準で装備しています。

このように、地域で医療情報を共有しようという考えは、日本のみならずアメリカでもまったく同様のプロジェクトが始まっているようで、アメリカはこの共有プロジェクトに、アポロ計画を上回る巨額の予算を組んでいるそうです。

つかの間の学会参加でしたが、開業医のありようも、大きな流れの中で新たな動きに繋がっているようで、私もこのような流れの中で、今後の仕事の舵取りをしていきたいと、元気を頂いた次第です。

来年の、WONCAアジア会議は、台湾のようですが、できたらまた参加してみたいなと感じた次第です。

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