できごと徒然
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No.0058

できごと徒然(58) − 尾道市医師会長 片山 壽先生講演会要旨 −

 

平成17年7月24日、 社団法人 臨床心臓病学会教育研究会 主催
アジア・ハート・ハウス大阪セミナー  みんなで考えよう!ニッポンの医療 第3弾
「地域で支えよう、わたし達の老後」 〜住み慣れた地域で安心して高齢者が医療を受けるために〜

以上のタイトルで、尾道市医師会長の片山壽先生の講演会を聞く機会がありました。
とても有意義で、考えさせられる内容でした。

 要は、〜住み慣れた地域で安心して高齢者が医療を受けるために〜
それぞれのかかりつけ医が主治医機能を中核に、ケアプランを作るときのケアアセスメントをそのままケアカンファレンスとして、利用するというのが特徴のように思いました。
横文字が並んで難しいですが、、 (注釈;現在の私の私見では、ケアアセスメントは担当のケアマネージャーが、高齢者のニーズを聴きだして、ケアプランを作成するにあたって、ケアマネージャのみが利用する問題分析ツールであるというような理解でした。)

尾道市では患者、医師、ケアマネ、訪問看護婦、民生委員ら皆が集って、ケアマネージャが利用するケアアセスメントをツールとしてカンファレンスを行っているということでした。

言うわ易くとも、各自多忙なものが、一箇所に集うということを当たり前とする感覚、ケアマネジメントを高齢者が地域で生活していく問題点を抽出するツールとして医師も、看護師も皆が認識しているということなど、すごいなと思いました。

本当に、〜住み慣れた地域で安心して高齢者が医療を受けるために〜はどうすればいいかということを、皆が共通の問題意識として捉えているということ。
そのための問題分析のツールとして、介護保険の認定に使う、ケアアセスメントを利用して、具体的な分析を行い、さらにサービス担当者(医師も看護師もケアマネジャーも理学療法士などの専門職も、あるいは民生委員もが、)当事者の患者を交えてカンファレンスを実施しているという具体的な実践など、意識が高いなと感じました。

どうしてこんなことが可能なんでしょうか。
実に介護保険の始まる6年前から このような試みを開始していたという歴史がなせるわざなんでしょうか。

私も一応はケアマネージャーの資格をもつものですが、介護保険のテキストには、確かにこのような多職種によるケアカンファレンスを行うというのが理想として記述され推奨されていますが、実際に実践することはなかなか困難です。
尾道市の試みをお聞きして、大変感心した次第です。

そして、やはり”一同に会すること”、”顔を会わせること。” これに勝る連携の方法はないのではないでしょうか。
片山先生の講演から、あらためて学んだこと、そして真似ることができると感じたのは、このようなケアカンファレンスの実践です。

今後、機会があれば、このようなカンファレンスを地域のなかで開いていきたいと、思いました。
以下、長文ですが、当日の片山先生の講演会の要旨を引用します。

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「包括的医療ケアシステムが支える安心の老後」

尾道市医師会会長 片山壽

 安心の老後を支えるシステムは地球規模の命題であり、特に高齢化の進む先進諸国では、いろいろな取り組みがなされています。
急速に進行する高齢社会の中で高齢者がかかえる不安は、まさに、国民が等しく感じる高齢化への多様な不安といえますが、わが国ではそれを支える政策や地域のシステムの整備は予想より遅れているかもしれません。

 介護保険はその不安の最大の要素である、「介護が必要な状態に、自分が、あるいは家族がなった時」に対して、ご本人や介護者をサポートするために設計された制度でありますが、基本的には自らの自立志向、健康志向の向上をベースにしたものです。
この点、介護保険の5年間の運用のなかで、当初、期待した基本理念の実践は充分に発揮できてはいないことが、今回の見直しに強調されています。残念ながら、サービス現場の連携体制やケアマネージャーの能力、公正さ、認知症への対応など多くの課題があがっていますが、地域が地域単位のシステムになっていないことが大きな要因と思います。介護保険は老後の安心をすべて支えてくれるものではありませんが、制度的に導入したサービス提供理論である「ケアマネジメント」は,高齢者医療と介護の共通言語として両者を接続することができます。日本の介護保険の優れた設計は、ケアプランが一人ひとり個別に作成される点といわれていますが、このケアプランが作成されるプロセス、さらにサービス提供の適正な流れを理論づけているのがケアマネジメントなのです。

2003年の高齢者介護研究会の報告書「2015年の高齢者介護」において、施設・在宅の二元論は廃止して、統合概念として「地域」を設定するという集約は、安心の基盤を「住み慣れた地域」に構築しようということです。ここで設定した「地域づくり」とは、ケアマネジメントをツールとして、さまざまな課題を地域の資源の再構築で解決していく、いいかえれば、今後の社会保障政策の効果を最大限に発揮できる基盤としての「地域包括ケアシステム」を構築することです。高齢者の生活を介護・医療を含んだ多様な支援体制で長期にわたり継続的に支えるシステムが必要であり、そこでは、あらゆる専門職種のチームが個々の高齢者の自立支援を継続的に過不足なく、行なっていく必要があります。
 
 尾道方式(The OMA method on long-term care management program)の実践は、地域におけるケアマネジメントの標準化により、主治医機能を中核とした多職種協働の包括的サービス空間へと進化した「新・地域ケア」の構築が、医師会と社会福祉協議会、さらには民生委員協議会の連携「社医民連協」を生み出し、さらには民生委員とケアマネージャーとの日常的な協働を可能にしました。さらに急性期病院の退院支援のシステム化が可能になる、退院前ケアカンファレンスの標準化に向かって現場の努力は続いていますが、高齢化のインパクトは地域のケアの総合力を問われるのです。

 また、介護サービスや医療以外の領域にも多様なサービス、行政による福祉サービスや、地域特性に合わせた各種サービス、NPOなどが地域を支えていますが、認知症高齢者や独居高齢者への社会的支援は権利擁護部分を含め、地域ごとのシステムとして「資源の再編」が急務であります。

 ここへの次期の政策が介護保険見直しの核ともいえる「地域包括支援センター」ですが、この制度横断的な地域づくりの意義を関係者が正しく理解し、設置運営するレベルに、日本の社会保障の政策効果の達成度はかかっているといっても過言ではありません。

 これはまさにケアマネジメントのルールで「地域(包括的ケアシステム)づくり」を行なう政策であり、ここでの最大の関門は、長期継続ケアの標準化における急性期病院から在宅(回復期・維持期)への移行するときの退院支援であり、急性期病院に求められる患者本位の地域医療連携の方向性も明確に見えてきます。

 ケアマネジメントをシステムツールとして稼動する地域が「新・地域ケア」対応の地域ケアという意味であり、あらたな「自立―支援システム」の中心に位置して利用者を支える安心の基盤が在宅医療に、また「地域医療」に求められます。地域ケアの総合力による一体的なサポートが、今後の社会保障政策の効率を高め、自助、共助を死語にしない本来的な自立―支援(Help to selfhelp)への振り返りは、国民(保険者)には意識改革としても重要な意味を持つでしょう。

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