できごと徒然
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No.0071

できごと徒然(71) − ファーブルとダーウインの休日 −

 

8月10日の日曜日、久しぶりに時間ができました。
滋賀県近代美術館で、「ファーブル昆虫記の世界」という催しがありましたので、出かけてきました。
JR瀬田駅で降りて、バスで滋賀県文化ゾーンまで。
県立図書館と近代美術館が隣接していて、緑豊かな立地でした。

ファーブル昆虫記、、、昔、さわりを読んだだけでしたが、フンコロガシなど不思議な昆虫の生態に胸躍らせ読み入った記憶があります。
懐かしさと昔の気持ちに戻りたくて、出かけてきました。

簡素な展示でしたが、ファーブルは独自の工夫を凝らし、南仏のアルマスという荒野に住んで、昆虫の観察を続けます。当時の昆虫学者が虫たちを解剖してその生態を調べよう、いわば昆虫の屍体を研究したのに対して、ファーブルは昆虫をその生きたままの姿で観察し、不思議な生態を研究します。
独自の視線にやはり感動いたしました。

また、ファーブルの膨大な業績を写真に残すなりして記録し、公表に尽力した息子、ポールの存在が無ければ、ファーブルの業績もこれほどの評価を得ることは無かったであろうと感じました。

その後続いて、大阪長居の大阪自然史博物館で開催されているダーウイン展に行きました。
今日は、自然科学を訪ねる一日になりました。

進化論で有名なダーウインですが、実はその祖父が医師であるとともに、すでに進化論の萌芽とも言える考えをもつ進歩主義者であったこと。
ダーウインの妻は、あのイギリス陶器の華、ウエッジウッド家の出身であることなど。
恵まれた環境にあったこと。

そして、幼少より甲虫採集など、自然への強い好奇心を持つとともに、伯父にあたるウエッジウッド家の勧めにより、イギリス海軍が計画したビーグル号世界一周に参加することになったことなど。

出自と環境があいまって、彼自身が幸運な淘汰により、世界一周の探検に出かけることが叶ったことを知りました。

帰国後、進化論という考えを深めていきますが、生命は造物主により造られたとするという当時のキリスト教的世界観の中にあって、自然淘汰による進化論を発表することは、教会の教えに背くことでもありました。

公表を控え、論を暖めること、実に20年。

ウオレスという若きライバルの出現により、その公表を急ぐことを余儀なくされたようですが、イギリスらしくも紳士的な話し合いにより、進化論の提言者という賞賛は、ダーウインに帰することになります。

丁寧な解説と、実際にダーウインがビーグル号で収集した貴重な標本の展示も相まって、非常に説得力のある、よい展覧会でした。

ファーブルにせよ、ダーウインにせよ、常人には思いもつかぬ並外れた好奇心の持ち主であるとともに、その偉大な業績の背景には彼らを支えた、さまざまな人たちの関わりがあったことを知りました。

一人の偉人の個性も大切ですが、それを支える人たちの出現なくして、偉人の輝きはなかったことでしょう。

生物の不思議と、それを解明しようとする人の智、努力に感銘を受けた暑い夏の日曜日でした。

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