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透析室だより(4)

新しいリンの吸着薬 ホスレノール

【新薬】新しいリン吸着剤 「ホスレノール 250mg/500mg 」

【はじめに】
 リンはほとんど全ての食品に含まれています。特にタンパク質1gあたりには、約15mg含まれていると言われています。生物はリン酸をエネルギー源として使用するために、リンは生命の活動に必須なものです。
 一方、リンは主として腎臓から排泄されます。腎不全で透析を受けておられる方では、この尿からの排泄経路がありません。また人工透析では最近の高性能の透析膜を使用しても、1回の透析でおよそ1000mgのリンが除去できるにすぎません。一日あたりにすると、約500mgです。
 したがって、透析患者さんは透析では除去しきれないリンを排泄するために、リンの吸着薬の服用が必要でした。代表的な薬が、「炭酸カルシウム」です。しかし、炭酸カルシウムを過剰に服用すると、血清カルシウム値が上昇することになり、上昇したカルシウムは、血管壁に蓄積したりして、異所性石灰化という、透析の長期合併症を起こします。
アメリカの意見では、炭酸カルシウム(炭カル錠、1錠500mg)の服用は、6錠までと勧告されています。
そこで透析患者さんは、リンの制限を余儀なくされていました。
皆さんも、血液検査をするたびに、「リンが高いですね。」、「リンの高い食品に注意してください。」と、言われたことが何度もあるに違いありません。

【炭酸ランタン】
 今回、ランタンと呼ばれる希土類元素が製剤化され、炭酸ランタンとして、リン吸着剤として、2009年3月より、バイエル薬品より発売されることになりました。
 昔、日本でもアルミニウムが強力なリン吸着剤として使用されていましたが、アルミニウムは腎不全患者では蓄積性があり、脳に沈着する可能性が指摘されて以来、アルミニウムの透析患者へのリン吸着剤としての使用は禁忌となりました。
ランタンはアルミニウムに匹敵するリン吸着力を持ちます。リンの吸着力は、ランタン1500mg=炭酸カルシウム3000mg=セベラマー6000mgに相当すると言われています。
しかも製剤として、カルシウムを含みませんので、炭酸カルシウムの服用時に経験する、カルシウムの上昇という問題は起こりません。
また生体への吸収は極めてわずかで、胆汁よりの排泄性であり、腎不全の患者さんでも安心して服用できるとされています。

ランタン(陽イオンに乖離)は、消化管内で、リン酸の陰イオンと強固に結合して、難溶性の物質となり、リン酸を便中に排泄します。


【炭酸ランタン、ホスレノールの服用にあたって】
1) この薬は、水無しで服用できるように工夫された、チュアブル錠という剤型です。
服用時には、充分な効果を得るために、口の中で細かく噛み砕いてください。

2) この薬は、噛み砕きやすいように、軟らかい剤型であるために、崩れやすい一面があります。包装のなかでも崩れている場合がありますが、その場合でも、1回分の錠剤をそのまますべて服用するようにしてください。

3)腹部レントゲン撮影をした際に、この薬の影が映ることがありますが、心配しないで下さい。

4)服用は、一日3回、食事の直後に服用することように勧められます。

5)副作用は、悪心、嘔吐、胃部不快感、便秘などがみられます。
食事の直後に服用することで、これらの副作用を軽減できるとされています。

6)リンの排泄を促進する薬ではないので、食事制限が不要になるわけではありませんが、以前にもまして、リンのコントロールが容易になることと思います。


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